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壮大な予告編? 『チェ 28歳の革命』 [映画]

 映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 前にフィデル・カストロのドキュメンタリー映画を見たことはあるんですが、ゲバラに関しては詳しい伝記などを読んだことはなかった。それくらいの知識で見に行くと、映画の中で時系列が行ったり来たりするので、国連でのゲバラの迫真の演説シーンに込められた意味とか背景が分かりづらかった気がします。パンフレットにその辺の説明が入っているので、あらすじのネタバレはこの映画の場合少ないと思われますので、待ち時間に先にパンフレットを買って読んでおくのもいいかもしれません。配給会社の人も同じようなことを考えたのか、上映開始の直前、簡単な人物説明のような映像が入ります。

  28歳の革命.jpg (写真はパンフレット)

 映画は全編スペイン語で進行。チェ・ゲバラがメキシコでカストロと出会いキューバの軍事独裁政権打倒で意気投合し、ゲリラ部隊を率いて民衆を味方につけ、軍事政権を倒すまでと、キューバ革命成功後、政府代表としてアメリカへ渡り、国連で革命の意義と新生キューバの正当性を堂々と主張する演説が交互に進みます。
 監督はアメリカの麻薬戦争をドキュメンタリータッチで描いた『トラフィック』でアカデミー賞を受賞したスティーブン・ソダーバーグなんで、入念なリサーチを重ねたドキュメンタリーっぽい硬質な映画です。2時間を超える結構長い映画なんですが、ゲバラ役のベニチオ・デル・トロの入魂の演技が素晴らしく、見ていてもだれることは一切なかったです。

 パンフの中のインタビューで監督自身が答えているんですが、最初の構想では描きたかったのはボリビアに渡って革命闘争に失敗し、非業の死を迎える部分だったとのこと。それを描くにあたって、どうしてもキューバ革命に身を投じた過程を描く必要があった、とのことでした。そういう意味では壮大な予告編とも言えるものかもしれませんが、裕福な家の出身で医者として何不自由なく暮らせる人生を捨てて、独裁政権に抑圧されるキューバの人のために人生を捧げたゲバラが、持病の喘息に苦しみながらゲリラ戦を闘い、革命家として成長していく過程が生き生きと描かれています。

 映画の中のゲバラは、農民出身の兵士に社会的なルールや読み書き、数学を教え、勝利に酔う部下の略奪や横暴も厳しく戒める理想のリーダーです。入念なリサーチに基づき賛美も否定もしていない、とのことなので、ほぼ真実の姿が描かれているんでしょう。ゲバラの高潔な人柄と指導力があっという間に民衆の支持を集めるのですが、欲望に弱く、堕落しやすく、思想も移ろいやすい残酷な大衆に向かって、ひとり孤高の理想を掲げるゲバラが痛々しくもあります。
 革命成功後のキューバにとどまれば、何不自由ない暮らしが待っていたはず。それを捨てて、再び見知らぬ国の大衆のために命を捧げたのはなぜなのか。誇大妄想狂や夢想家だったのか、それとも傑出した大衆のリーダーだったのか、その辺が続編を見れば分かるのでしょうか。

 ゲバラがこの世から去っても、政治的、実務的なバランス感覚に優れたカストロ(劇中にそういう描写が出て来ます)によってキューバは現在もちゃんと国として存在していますが、冷戦が終わっても世界の人々は紛争や侵略を繰り返しており、人の愚かさを良識や理想で束ねるのは不可能なのかもしれません。それでも、学校の先生みたいに、敗走した政府軍の兵士から車を奪ったゲリラ兵を叱るゲバラを見ていると、人に対する信頼や理想を最後まで捨てなかった人物だったのだろうか、などと思いました。


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コメント 12

まる

凄く見たい映画です。

どこか病んでそうなチェ・ゲバラの高潔さににひどく惹かれます。私も見に行かねば~。
by まる (2009-01-13 01:10) 

ジジョ

こんにちは☆

確かに、「壮大な予告編」という感じですね〜。
私は「39歳別れの手紙」も続けて観たので、余計にそう感じます。
別れの手紙の内容(特に家族への)と、その死に様に
彼のすべてがつまっている気がしました。
でも、この前半がなければ、そうは思えなかったのかも。。。
パンフレット、読んでみたいですね〜。
by ジジョ (2009-01-13 02:08) 

しまうま

 まるさん

 場面転換が多いのと、時系列でお話が進まないので、ちょっと分かりづらい部分があるかもしれませんね。だらだらとお話が進んでいって、気がついたら終わってた、みたいに感じる人も多いかもしれません。
 でも、ベニチオ・デル・トロが演じるゲバラはリーダシップがあり、正義感も強くてすごくかっこいいですよ。
by しまうま (2009-01-13 13:06) 

しまうま

 ジジョさん nice!ありがとうございます。

 本編の後に「別れの手紙」の予告編が上映されたのですが、カストロにあてた手紙のくだりで私はちょっとぐっと来たかも。前編ではカストロは完全な脇役でしたけど、師であり、親友でもあったカストロとの関係が後半ではどう描かれるのかな~とちょっと楽しみですね。

 国連での演説のシーンは完全にゲバラが乗り移ったような熱演でした。指導者ってのは演説がうまくないと駄目なんだなあと思いました。振り返って、日本の場合はどうですかね。たま~に国会中継とか見ますけど、大臣の答弁は役所が作った文章を読み上げるだけ…。そりゃ国民も政治に関心失うわなあ…と思いました。
by しまうま (2009-01-13 13:15) 

naonao

今、ゲバラの本で原出版の「チェ・ゲバラ~ヒューマン・フォト・ドキュメント」を読んでます。ゲバラを知れば知るほど本当に格好良いなあ~と思います。写真に日記、詩、手紙など豊富で面白いです。
トロはゲバラを演じるには最適な役者さんでしたね。本当によく似てると思います。しばらくゲバラを読み続けたいです。
by naonao (2009-01-13 22:19) 

しまうま

 naonaoさん nice!ありがとうございます。

 オリバー・ストーンが撮ったカストロのインタビュー映画の中で、今でもカストロが街に出ると大勢の民衆に取り囲まれるのが不思議だったんですけど(その他の独裁国家だったら暗殺されるかも)、この映画見て、何となく理解できました。
 大勢の人の意思を縛り付けるには、歴史から考えて恐怖か洗脳が一番効率がいいんじゃないかと思うんですよ。ゲバラもカストロも処刑や粛正を行ったかもしれないけど、映画の中では信頼を得るためにねばり強く説得し、仲間になったらルールを教える。仲間になったら、死にそうになっても見捨てない。
 だから革命は成功して、キューバは今も安定してるのかもしれません。そう考えると、ゲバラはきっと正しかったんですね。

 時代が違うから比較にならないかもしれないですが、人の命を武器にして闘うイスラム原理主義の闘争は、だからきっと成功しないんじゃないかなどとふと思いました。
by しまうま (2009-01-14 00:21) 

main_tenant

ひさびさに遊びに来ました。
この映画今一番見たいです・・・
しかし、産後間もないためしばらく映画は無理そうです・・
いつになったら行けるんでしょうかね?
しまうまさんのコメントを読みつつ後にDVDで楽しみたいと思います。
by main_tenant (2009-01-30 16:07) 

しまうま

 main_tenantさん nice!ありがとうございます。

 おお~っ。ご出産おめでとうございます。育児、大変でしょうが、たまに映画のDVDで息抜きもいいですね。そちらにもたまにおじゃまします。
by しまうま (2009-01-30 19:07) 

ドイツ特派員

しまうまさん、

実はこの映画は見たいですねえ。大学時代に三好徹の「ゲバラ伝」を読んで以来、私のヒーローはゲバラですから。

もうゲバラのような人は出ないだろうし、今は彼のような人が入る余地は無いような気がします。彼がアルゼンチン人であること、それを捨ててコスモポリタンとして革命に身を投じたこと、にも関わらず実はアルゼンチンでの市民証をずっともっていたこと...こんなことにとても惹かれます。
by ドイツ特派員 (2009-01-30 23:01) 

しまうま

 ドイツ特派員さん

 喫茶店でアエラ読んでたら、主演のベニチオ・デル・トロの短いインタビューが出ていて、「絹の手袋をはめて大切に扱うように」役に取り組んだそうです。まさにそんな入魂の演技でしたよ。

 経営する会社で大勢の人をクビにしてるのに、自分は何百億円のボーナスをもらって、自家用ジェットで通勤するような社長さんがアメリカには結構いるそうですけど、そういうのが何だかヘンだ(当たり前だけど)という風に思い始めてる人が増えてるんですかね。

 雑誌か新聞か忘れましたが、ゲバラのことを扱った本の書評で、ゲバラが死んでこんなに時間がたっても今も人々のヒーローでいることは逆に不幸なことなのだ、みたいなこと書いてありました。
 文明や社会が進歩しても、独裁や貧富の差はなくならず、世界は戦争や紛争で混乱したままで、彼のようなリーダーを今も必要としているから。他人のために懸命に努力する人の物語が感動を呼ぶということは、そんな人が今の世界にいないということだから。

 新聞読んでると、大勢の人が会社をクビになるとか、悲惨な事件が起きたとかのひどいニュースばっかりで、こんな時だからこの映画が人をひきつけるのかもしれませんね。
by しまうま (2009-01-31 15:48) 

duke

やっと見ました。とても良かったです。
今の世界の事を考えさせられる映画だと思いました。
by duke (2009-02-13 12:12) 

しまうま

 dukeさん nice!ありがとうございます。

 「モーターサイクルダイアリー」も見られたんですね。あの映画はかなり気になっていたんですが、劇場では結局見られずじまいでした。
 あれから、私もゲバラに関する簡単なドキュメンタリーの本を読んだりしたんですが、南米の旅の途中でハンセン病の病院を訪問したりするんですよね。そういう、社会の弱者に対する視線の優しさみたいなものはずっと一貫してたんだなあ、と思いました。
by しまうま (2009-02-13 20:00) 

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